はじめまして、HR PLUS合同会社の杉内です。弊社では全国の企業様を対象に採用支援サービスを提供しています。
この記事では、求人の応募者数を増やす継続的な改善方法についてまとめています。
弊社独自の採用ロジックですので、ネタバレになってしまうのではないかと躊躇しましたが、少しでも採用の手助けができればと思い公開に踏み切りました。
このロジックを知っておくと、下記の3つが分かるようになります。
- 応募数が増える仕組み
- 具体的な調査方法
- 具体的な改善手法
弊社ではこの独自の採用ロジックを「Job Market Fit 理論」と呼んでいます。
基本的にどんな業種・職種でも応用できる本質的なノウハウですが、一つだけ注意点があります。
今回お伝えする内容をすべて自社だけで実行するのは、少しハードルが高いです。
中には簡単に実行できるものもありますが、普段の業務と同時並行で進めるとなると、手が回らなくなる可能性があります。
もし自社だけでは難しそうだと判断した場合は、お気軽に弊社へご相談ください。経験豊富なコンサルタントが御社の採用を継続的に改善していきます。
独自の採用ロジック「Job Market Fit 理論」とは
Job Market Fit とは、求人(Job)が転職マーケット(Market)にフィットしている状態を指す言葉です。
この状態を作り出すことで、自然と応募数は増えていきます。
- Job = 求人(事業内容、仕事内容、条件、アピールポイントなどすべてを含む)
- Market = 転職マーケット(採用ターゲットのニーズ)
一方で求人が転職マーケットにフィットしていないと、応募が来なかったり、応募が少なかったりします。
それでは、この「Job Market Fit」の状態を作り出すためにどんな手順で改善していくのかを解説します。
具体的な改善のステップ
求職者の行動や思考性を理解するため、9つの調査方法をご紹介します。
調査から得られた情報をもとに「何をどう改善するか」「どんな仮説が考えられるか」を決めます。
改善の軸が決まったら、10パターンのアプローチで改善を実施します。
求職者理解とは
Job Market Fit の状態を目指すためにまずやるべきことは、自社の採用ターゲットを理解することです。これを「求職者理解」とも呼びます。
求職者理解をさらに2つに分けると「行動理解」と「思考性理解」です。
行動を理解することで求職者に求人を発見してもらい、思考性を理解することで求職者の応募を促進できるようになります。
- 行動理解
- 求職者が仕事を探すときにどんな行動を取るのか
- どんなキーワードで検索するのか
- 思考性理解
- 求職者がどんな基準で会社を選んでいるのか
- どんな不安を抱えているのか
- 何を求めているのか
行動理解
行動理解とは、求職者(採用ターゲット)が仕事を探すときにどんな行動を取るのかを理解することです。
職種やタイプによって行動パターンは異なりますが、大抵の場合は下記のいずれかに該当します。
- ネットで特定のキーワードを入力し検索する
- 特定の求人サイトで条件やキーワードを入力し検索する
- ハローワークに行く
- 人材紹介会社や派遣会社に相談し登録する
- スーパーやコンビニで求人誌を取る
- 知り合いに聞く
- 企業の採用ページなどを閲覧する
求職者の行動を理解していないと、求人を発見してもらうことが難しくなります。
「応募が来ない」と悩む企業様は多いですが、そもそも求人が閲覧されていないパターンもよくあるんです。
また、どんなキーワードで検索しているのかを調査することで、採用ターゲットのニーズを把握できるメリットもあります。
詳しい調査方法は、「求職者理解のための具体的な調査方法」にて解説いたします。
思考性理解
思考性理解とは、求職者(採用ターゲット)がどのような基準で会社を選び、どんな不安や疑問を持っているのかを理解することです。
以下は思考性理解において重要なポイントです。
- 会社選びの基準
- 給与や福利厚生
- 勤務地
- 働き方
- 企業のビジョンや理念、社会的評価
- 事業内容、社会貢献性、事業成長性
- 仕事の内容やキャリアパスの可能性
- 抱えている不安
- 仕事内容や職場の雰囲気が自分に合うかどうか
- 長期的な安定性や成長性に対する懸念
- 新しい環境に対する不安
もし求人を発見してもらえたとしても、内容に納得し、興味を持ってもらえなければ応募につながりません。
私たちが普段インターネットでモノを買うときと同じで、事前に知っておきたいことや自分がほしいと思うポイントがないと購入には至りません。
求人でも同じような現象が起きるため、求職者の不安や疑問点を先回りして解消し、求職者に刺さるアピールポイントを記載することが応募促進につながるのです。
【実践ワークショップ】自分自身に置き換えて求職者の気持ちを考える
それでは、ここで一つ実践形式のトレーニングをやってみましょう。
企業の中で働いていると「企業目線」に偏ってしまいがちで、もともと持っていた「求職者目線」を忘れてしまうことがあります。
マーケティングを理解する上で、自分自身の行動を振り返りながら求職者の気持ちを考えることは非常に重要です。
もし今あなたが転職するとしたら、具体的にどんなことから始めますか?
下記の質問を自分自身に投げかけ、書き出してみましょう。
- 転職するときにまず何からはじめますか?
- ネットで探す場合にどんなキーワードで検索しますか?
- どんな転職サービスを利用しますか?
- たくさん求人がある中でなぜその求人をクリックしましたか?
- なぜその求人に応募したいと思いましたか?
- 求人を見て、分かりづらいところはなかったですか?
- いきなり応募しますか?それともお気に入り登録しますか?
- 求人を比較検討するためにどれくらいの数を確認しますか?
- 応募方法は気になりますか?履歴書の準備は面倒だと感じますか?
- 応募した後はどんな気持ちで待っていますか?
こちらのワークショップは、社員研修として実践してみるのも良いと思います。
みなさんでホワイトボードに書きながら、求職者目線を取り戻しましょう。
求職者理解のために行う9つの調査方法
調査方法は、大きく分けると「定量調査」と「定性調査」の2つがあります。
定量調査では、数値データを収集して傾向やパターンを把握し、求職者の行動や考え方における全体像を捉えます。
定性調査では、深掘りしたインタビューやフィードバックを通じて、求職者の具体的な経験や感情を理解します。
具体的な方法は、下記のリストをご覧ください。
- 定量調査
- 社内アンケートでデータを取る
- 求人サイトや人材紹介の担当者からデータをもらう
- Web上にあるアンケート調査結果を見る
- 求職者から人気がある求人の調査
- キーワード調査
- 求職者データベースを見る
- 定性調査
- 社内で個別ヒアリング
- 面談または面接でのヒアリング
- 企業口コミサイト、SNS
比較的カンタンに実行できるものは、オレンジ色のアンダーラインを引いています。
それでは一つずつ解説していきます。
社内アンケートでデータを取る
社内アンケートは、とても簡単で実施しやすいオススメの手法です。
理由は「現職の従業員=採用ターゲットに近い人物」だからです。
その従業員に対して、転職活動の方法や求人サイトの利用経験、職場選びの基準などを質問することで、求職者の理解が深まります。
逆に初めて募集する職種の場合は、社内アンケートが効果的ではないこともあります。
社内アンケートを実施するメリットは、ほかにもこんなものがあります。
- どういう経路で応募したのかデータを取れる
- なぜ応募したのか、なぜ入社を決めたのかデータを取れる
- 普段どんな求人サイトを見ているのかデータを取れる
- 従業員の満足度などを数値化し、求人に情報を載せられる
- 従業員からの具体的な意見やフィードバックを収集できる
- 従業員の意見を回収することでエンゲージメント(帰属意識)向上につながる
定期的なアンケートの実施は、採用活動のヒントを得られるだけでなく、従業員のエンゲージメント向上にもつながつながるため非常に有効的です。
実施する頻度は、目的に応じて異なります。採用活動のヒントを得るためだけの調査であれば単発で実施すれば良いですし、従業員満足度の向上を目的に定期的な数値測定が必要であれば四半期ごとに実施するのも良いです。
アンケートの作成には、無料ツール『Googleフォーム』を利用するのが一般的です。
求人サイトや人材紹介の担当者からデータをもらう
求人サイトや人材紹介サービスの運営会社は、豊富なデータを保有しており、これを活用しない手はありません。
一部のデータは外部に公開できない場合もありますが、意外と公開可能なものも多く、以下2パターンのどちらかで対応してくれることが多いです。
- オンライン打ち合わせでの画面共有のみならOKのパターン
- オンライン打ち合わせでの画面共有+資料をメールで送信してくれるパターン
まず、自社が利用している求人サイトや人材紹介サービスの担当者に連絡を取り、打ち合わせの機会を依頼してみましょう。※基本的に打ち合わせを断られることは少ないはずです。
担当者から打ち合わせの了承が得られたら、当日の時間を有意義に使うために、事前に具体的な質問内容をメールで送っておくと良いでしょう。
Web上にあるアンケート調査結果を見る
Web上にはさまざまなアンケート調査結果が公開されており、求職者のニーズや市場動向を知る上で貴重な情報源となります。
例えば、「アルバイト 選ぶ理由 アンケート」で検索すると「2200人に聞いたアルバイト探しの条件」という記事がヒットしました。(https://corp.en-japan.com/newsrelease/2023/32668.html)
この記事を読むと、アルバイトを探す際に求職者が重視しているポイントや優先する条件が明らかになります。これを活用すれば、より求職者目線に寄り添った求人情報を提供するヒントが得られるでしょう。
キーワードを入力するときは、「職種名+アンケート調査+@」で検索してみてください。
求職者から人気がある求人の調査
一部の求人サイトでは、各求人のお気に入り登録者数やエントリー数を可視化し、求職者からどれくらい人気があるのか調査できるようになっています。下記の求人サイトが該当します。
- Indeed(スマホアプリのみ)
- engage
- Wantedly
自社が募集している職種と同じような職種を検索し、人気のある求人を見つけ出すことは、自社の求人を改善するために効果的な方法です。
まず、検索エンジンや求人サイトで同職種の人気求人を調べ、なぜそれらが求職者に支持されているのかを分析します。
給与や福利厚生、働き方の柔軟性、職場の雰囲気など、求職者にとって魅力的な要素が何かを考え、これらの要素を自社の求人と比較してみましょう。
キーワード調査
キーワード調査は、よく検索されているキーワードを調べ、求職者の行動を理解することを目的に行います。求職者と求人の出会い(接点)を生み出す上で重要な要素です。
この調査により、求職者がどのようなキーワードで仕事を探し、どのようなニーズを持っているのかを把握することができます。
具体的には、Indeedの採用市場レポート、Googleキーワードプランナー、サジェストキーワードツールを活用して、求職者に届きやすいキーワードを効果的に見つけます。
- Indeedの採用市場レポート
- 実際の市場データに基づいて求職者が使用するキーワードやトレンドを確認し、これを求人タイトルや説明文に反映して露出を高めることが可能です。
- Googleキーワードプランナー
- キーワードの検索ボリューム(月間平均でどれくらい検索されているか)を確認し、ニーズを探ることができます。
- サジェストキーワードツール
- 検索されているキーワードの組み合わせが発見しやすくなり、ニーズを探ることができます。
これらのツールで得たキーワードを求人情報に反映させたり、どういうニーズを持っているか仮説を立てたりすることで、求職者の目に留まりやすくなり、閲覧数や応募率の向上が期待できます。
求職者データベースを見る
スカウトを送信できる求人サービスを契約している企業であれば、求職者データベースを活用した調査も可能です。具体的な例を用いて解説しましょう。
過去に弊社が支援していた企業様が、新卒向けスカウトサービスの「OfferBox」を利用していたので、新卒デザイナー志望者のニーズ調査を行いました。
検索条件を「Webデザイナー」に絞り、「企業選びの軸」という項目にチェックマークを入れて調査した結果、以下のような結果が得られました。
順位 | 「企業選びの軸」の項目 | ヒットした件数 |
---|---|---|
1 | 給与水準や昇給率の高さ | 491件 |
2 | 服装や働き方が自由な環境 | 421件 |
3 | 整った育成環境 | 380件 |
4 | 残業時間の少なさ | 288件 |
5 | 住宅補助など給与以外の制度の充実 | 272件 |
6 | 学んできた専門性を活かせる環境 | 213件 |
7 | 事業や市場の成長性の高さ | 161件 |
8 | フレックス制度の導入 | 143件 |
9 | 有休消化率の高さ | 138件 |
10 | 長期的に継続している事業 | 136件 |
11 | 20代から責任ある仕事を任せる環境 | 103件 |
12 | 多様な職種を経験できる環境 | 102件 |
13 | 業界シェアの高さ | 98件 |
14 | 堅実な事業 | 75件 |
15 | 先鋭的な技術・サービス | 67件 |
16 | 育児・介護休暇制度の活用実績 | 67件 |
17 | 海外駐在の機会 | 59件 |
18 | 既存業界に対する新しいアプローチ | 43件 |
求人や採用コンテンツを作成する際にどんな内容を書いたらいいか迷う方は、上記のデータを活用してください。
社内で個別ヒアリング
募集職種と同じ仕事をしている社員にヒアリングを行うことで、職種特有のリアルな声やニーズを直接把握することができます。
また、一緒に求人内容を確認しながら、フィードバックをもらうのもおすすめです。
実際にその職種で働く社員から聞くことで、求人内容や業務内容に対する理解が深まり、求職者にとっても具体的で魅力的な情報を提供できるようになります。
面談または面接でのヒアリング
面談や面接の主な目的は、見極めることと惹きつけることですが、この時間を利用して求職者に直接ヒアリングするのも有効です。
例えば、「求人に応募する前にもっと知りたかった情報はありませんか?」と質問することで、求職者が事前に求めていた情報や不足していた情報を把握できます。
さらに、「応募をためらってしまう瞬間はどんな時ですか?」「企業の情報をどのように調べていますか?」といった質問で求職者の行動や考え方を探ることで、求人内容の改善や効果的な採用戦略の立案に役立ちます。
こうしたヒアリングから得られるインサイト(※)は、求職者にとって魅力的な情報を提供するための貴重な材料となります。
※インサイト=求職者の心の奥にある潜在的な欲求やニーズ
企業口コミサイトやSNSでの調査
企業口コミサイトやSNSでの調査は、求職者が実際にどのような視点で企業を評価しているか、またどのような不安や期待を持っているかを知るために非常に有効です。
口コミサイトには、実際に働いた経験のある人たちが投稿した意見や感想が集まっており、求職者が知りたがるポイントや企業の改善点が見つかります。
SNSでも、求職者が企業の評判や職場環境についてコメントすることが多く、特にTwitterやLinkedInではリアルな声が発信されています。
これらの情報源から、求職者が何を重視し、どのような点で企業に魅力を感じているかを把握し、求人内容の改善や採用戦略の立案に活用することができます。
改善を実施するための10パターンのアプローチ方法
ここまでにお伝えしてきた調査方法を実施し、求職者の理解が深まったら、次は以下のような観点で改善のアプローチを進めていきます。
- 不安払拭:求職者の懸念点や不安を解消するための情報が含まれているか
- 魅力づけ:自社の良さをアピールできているのか
- POD(Point of Difference):自社が選ばれる理由は何か
- POP(Point of Parity):自社が選ばれにくい理由は何か
- キーワード対策:検索キーワードを自然に盛り込めているか
- 社内体制の検討:求職者のニーズに対応できることはないか
- 選考プロセスの最適化:応募から採用までスムーズで分かりやすいのか
- カテゴリー調整(ズラす):掲載カテゴリーをズラすことはできないか
- 細分化(分ける):業務内容や応募要件、給与レンジを分割できないか
- 媒体検討:掲載している求人媒体は適切なのか
これらの観点で改善のアプローチを進めることで、求職者にとって魅力的かつ選ばれやすい求人を作成し、採用活動をより効果的に行うことができます。
それでは、ひとつずつ解説していきます。
不安払拭
採用活動において、求職者が抱える不安を解消することは、応募意欲を高める上で重要です。以下の観点で求職者の不安を払拭し、安心感を与える情報を提供しましょう。
■具体的な業務内容の明示
求職者が入社後に自分がどのような仕事をするかを明確にイメージできるように、業務内容を詳細に記載します。曖昧な表現を避け、日々の業務内容や役割を具体的に伝えることで安心感を持ってもらいます。
■残業や働き方に関する情報の明確化
残業時間の平均や、働き方の柔軟性についての情報を明記することで、働きやすさを伝えます。特にワークライフバランスを重視する求職者には、リモートワークの可否やフレックスタイム制度の有無などもアピールポイントになります。
■キャリアアップや教育体制の説明
求職者が成長機会を持てるかは、将来のキャリアを考える上で重要な要素です。研修制度や資格取得支援、キャリアアップの具体的な支援内容を示すことで、不安を和らげます。
■職場環境の紹介
チームの雰囲気や働きやすさを写真や社員の声を通して伝えると、職場環境がより伝わりやすくなります。社内のコミュニケーションの取りやすさやチームワークの良さも積極的に紹介しましょう。
■福利厚生やサポート体制の明記
求職者が安心して長く働けるよう、福利厚生やサポート体制について具体的に説明します。健康診断やメンタルサポート、育児支援制度などの詳細を記載すると、応募のハードルが下がります。
魅力づけ
求職者に「この会社で働きたい」と思ってもらうためには、自社の魅力をわかりやすく整理し、求人を通して伝えることが大切です。これを魅力づけと呼びます。
以下のポイントで企業の強みをアピールし、求職者に響く情報を提供しましょう。
■成長機会の強調
キャリアアップ支援や研修制度、スキル向上の機会がある場合、それを明確に伝えます。実際の事例や過去の成功例を交えることで、求職者にとっての成長がイメージしやすくなります。
■企業のビジョン・ミッションの共有
自社のビジョンやミッションをしっかりと打ち出し、どのような価値を社会に提供しているか、社員がどのような思いで働いているかを伝えます。求職者が共感しやすい内容を盛り込むことで、会社の目的に惹かれる候補者を増やせます。
■ワークライフバランスの充実
リモートワークやフレックスタイム制、残業の少なさといった働きやすさに関するポイントをアピールします。仕事とプライベートのバランスを重視する求職者にとって、魅力的なポイントになります。
■社風・チームの雰囲気の紹介
チームワークの良さや社内コミュニケーションの活発さなど、会社の雰囲気がわかるエピソードや社員の声を掲載します。写真や動画を使って、職場の実際の様子を伝えるのも効果的です。
■独自の福利厚生や特典のアピール
一般的な福利厚生に加え、自社ならではの制度や特典があれば、それを具体的に紹介します。例えば、社員割引、健康維持サポート、レクリエーションやイベントなどの内容も、求職者にとっては魅力的です。
■実績や業界での評価
自社が業界でどのようなポジションにあるのか、成功事例や顧客からの評価を示すことで、企業の信頼性や価値をアピールします。求職者が「ここで働けば安心だ」と感じる材料となります。
POD(Point of Difference)
POD(ピーオーディー)は、競合他社にはない自社の強みや独自性を打ち出し、求職者に「自社だからこそ選ばれる理由」を伝える重要なポイントです。
一つ前の項目でお伝えした「魅力づけ」は、求職者に響くさまざまなメリットを並べるイメージです。その中でも、特に自社の強みとなり、他社との差別化要素として際立つものがPODだとイメージしてください。
PODを見つけるためのヒントとして役立つのが社員アンケートです。例えば、「弊社に入社した理由を教えてください」と質問すると、実際の社員が感じた魅力や決め手が見えてきます。
このようなフィードバックから、他社にはない自社の強みを抽出し、求職者に響くポイントとして打ち出しましょう。
POP(Point of Parity)
POP(ピーオーピー)は、一般的に類似化や同質化とも呼ばれるもので、競合他社と同等であるべき要素や、求職者が企業を選ぶ際に「最低限これだけは欲しい」と感じる条件のことです。
ほかの要素がどれだけ優っていても、最低限必要な条件を満たしていないと求職者から選ばれるのは難しいです。
例えば、あなたが車を購入すると仮定してみましょう。「デザインはカッコよくて、燃費も良いし、収納も十分で、価格も手が届く範囲・・・でも、エアコンが付いていない」こんな車を購入したいと思うでしょうか?ごく少数派では選ぶ人もいるかもしれませんが、通常ならエアコンのような最低限の条件が整っていないと購入には至りませんよね。
これは求人の場合も同様です。求人におけるPOPに相当するのは「給与水準」「働き方の柔軟性」「福利厚生」といった基本条件です。
他社の求人がどれも月給30万円以上で掲載されている中、自社だけが月給22万円であれば、たとえ他の要素で自社に強みがあったとしても、大きく水準を下回ることで応募数が減り、採用活動が不利になる可能性が高まります。
他社求人がリモートワークを提供している中、自社だけが出社必須の場合、デザイナー職のように柔軟な働き方が重視される職種では、見向きもされない可能性があります。
POPの要素を適切に整えることは、求職者にとっての「安心できる基準」を提供することにつながります。他社と同等の条件を満たすことで、応募者の離脱を防ぎ、採用活動を有利に進めることができます。
キーワード対策
キーワード対策は、検索エンジンや求人サイトを通じて、求職者に求人情報を見つけてもらいやすくするための重要な手法です。
「キーワード調査」の説明でお伝えしたとおり、Indeedの採用市場レポート、Googleキーワードプランナー、サジェストキーワードツールを活用し、求職者がどのような言葉で仕事を探しているか、どんなニーズがあるかを理解します。
こうした調査結果に基づき、求職者が興味を持つキーワードを自然に求人情報に反映させることで、検索結果での露出を増やし、より多くの求職者の目に留まる求人情報を作成することが可能です。
キーワードを盛り込む際には、無理に詰め込まず、自然な流れで文章に組み込むことが大切です。下記は良くないキーワード対策の事例です。
- 市町村などエリア名を羅列して記載する(渋谷、恵比寿、原宿、青山、六本木、新宿、池袋、目黒、品川)
- キーワードを不自然に並べる(高収入未経験歓迎の営業正社員リモート可能求人)
- 実態と異なる誇張表現(リモートと出社の併用なのにフルリモートと記載するなど)
また、キーワードから得られた情報をもとに採用ターゲットを変更することも可能です。
例えば、営業職の検索キーワードを調査していくと、「50代」「リモート」「業務委託」などが上位にランクインする場合があります。
採用に苦戦しているのであれば、年齢層や働き方、雇用形態などを見直し、新しい可能性を探ることも重要です。
社内体制の検討
採用活動においては、求職者のニーズに応じた柔軟な体制を整えることが重要です。調査から得られた情報をもとに、社内体制の見直しができないか検討してみましょう。求職者が求める条件や働き方に合わせて体制を整えることで、魅力的な企業環境を提供し、採用力を高めることが可能です。
例えば、リモートワークやフレックスタイム制度の導入、キャリアアップ支援制度の充実、職場のコミュニケーション体制の強化といった施策が求職者に好まれる傾向が見られる場合、これらの要素を取り入れることで、応募者の関心を引きつけやすくなります。また、福利厚生の充実や多様な働き方のサポートを提供することで、長期的に働きやすい環境を提供できる企業として認識されやすくなるでしょう。
選考プロセスの最適化
選考プロセスの最適化は、求職者にスムーズでわかりやすい体験を提供するための重要な要素です。
選考にかかる時間や手順が複雑であったり、連絡が遅かったりすると、求職者の関心を損ね、辞退につながる可能性があります。以下のポイントを参考に選考プロセスを見直し、最適化しましょう。
■選考ステップの簡略化
選考プロセスが多すぎると、求職者の負担が増え、離脱の原因になります。例えば、無駄な面接回数や冗長な試験を減らし、必要なステップに絞ることで、求職者にとってわかりやすくシンプルなプロセスを提供します。アルバイトの場合であれば、履歴書不要にして、現地で記入してもらうのも効果的です。
■選考スケジュールの迅速化
面接の日程調整や結果の連絡を迅速に行い、求職者を待たせないようにします。特に人気のある職種では、スピーディーな対応が求められ、即日~数日以内に結果が出るような対応が理想的です。
■オンライン面接の活用
リモートワークが浸透している現代では、オンライン面接の導入が求職者にとっても企業にとっても利便性を高めます。初回面接をオンラインで実施するなど、時間と場所の制約を減らし、より多くの求職者に対応できるようにしましょう。
■事前情報の共有
面接前に企業文化や具体的な業務内容について資料を送付するなど、求職者が企業理解を深められる情報を事前に提供します。これにより、面接の質が向上し、求職者にとっても有意義な時間となります。
これらの改善を通じて、求職者が選考プロセスで感じる不安や負担を減らし、応募意欲を高めることができます。スムーズでわかりやすい選考プロセスを提供することで、求職者に好印象を与え、採用成功の確率を高めましょう。
カテゴリー調整(ズラす)
カテゴリー調整は、職種や雇用形態、掲載エリアのカテゴリーを変更し、採用ターゲットのマーケットをズラす手法のことです。この手法により、もともと狙っていた採用ターゲットとは異なる層に対して求人をアピールできます。
■職種カテゴリーの調整
例えば、「コンサル要素が強い営業職」の場合、コンサルカテゴリーにも掲載すると、普段は営業カテゴリーで仕事を探していないような人たちと出会うチャンスが生まれます。
他の例として、「クリエイティブな要素が求められるマーケティング職」の求人を考えてみましょう。この場合、通常のマーケティングカテゴリーに加えて、クリエイティブ職やデザイン職のカテゴリーにも掲載すると、新たな層にリーチできます。
■雇用形態の調整
正社員採用にこだわり続けて、なかなか人が採用できないといった場合に他の雇用形態を検討することも重要です。最近は業務委託として働く人も増えてきましたし、企業に勤めながら副業をする人も増えています。また、アルバイト採用であれば、タイミーのようなスポットワークも増えています。
雇用形態のカテゴリーを調整するだけで、あっさりと採用が決まることもあるので、一度検討してみることをおすすめします。業務委託採用が分からない場合は、弊社にご相談ください。業務委託やフリーランス、副業の知見を豊富に持っています。
■掲載エリアの調整
例えば、勤務地が県境に近いエリアの場合、隣接する県の求職者にもアピールするために、勤務地エリアを隣県のカテゴリーにも掲載するという調整が有効です。東京に近い埼玉エリアであれば、東京のカテゴリーにも掲載することでたくさんの人にリーチできるようになります。
細分化(分ける)
細分化は、求人情報をより具体的でターゲットに合った内容にするために、職務内容や応募条件、給与レンジなどを分けて掲載する手法です。
この手法により、求職者が自分に適したポジションや条件をすぐに見つけられるようになり、応募の意欲を高めることが期待できます。以下のような方法で細分化を行うことが効果的です。
■職務内容の細分化
一つのポジションに複数の業務が含まれている場合、求人を分けることによって効果を発揮する場合があります。
例1:「〇〇の改善コンサル」と「改善に伴う実務作業」を一緒に募集している場合、コンサル業務と実務作業に分けて求人を出すことで、採用の確率が高まります。これは、コンサルティングができる人材と、実務作業を行う人材のスキルセットが異なるためです。
例2:秘書業務にメール返信、スケジュール調整、外出する用事の代行、書類整理、来客対応などが含まれている場合、特に困っている「メール返信・スケジュール調整」だけリモートワーク人材で採用するなど、業務内容を分けて掲載する方法もあります。
それぞれの業務に必要なスキルや役割を明確にすることで、求職者にとって自分の経験に合うか判断しやすくなります。
■応募条件の細分化
応募条件も、経験者向け・未経験者向けに分けるなど、対象者に合わせた条件を設けると、より多くの求職者に対応できます。たとえば、経験者には「プロジェクトマネージャー募集」、未経験者には「プロジェクトサポート担当募集」と分けることで、それぞれのスキルレベルに適したポジションをアピールできます。
■給与レンジの細分化
給与レンジを分けることで、ターゲットに合わせたアピールが可能です。
例:年収300万円〜700万円の求人がある場合、「年収300万円〜500万円」と「年収500万円〜700万円」に分けて掲載することで、より経験豊富な候補者に向けてアピールできます。下限年収を調整することで、高スキルの求職者にとって魅力的なポジションとして目に留まりやすくなります。キレイに分けられない場合でも、「300万円〜500万円」と「400万円〜700万円」といった柔軟なレンジ設定が効果的です。
このような細分化を行うことで、求職者が自分に適した条件の求人を見つけやすくなり、応募意欲の向上と採用の成功率が期待できます。
媒体検討
媒体検討とは、今利用している求人媒体に、自社が求めている採用ターゲットがいるのかを再度検討するプロセスです。
これはマーケティングの基本ともいえる考え方で、「魚(採用ターゲット)がいる池(求人媒体)に、エサがついた釣り糸(メリット)を垂らさないと釣れない」という例えでよく説明されます。
つまり、どれだけ魅力的な求人情報(エサ)を作成しても、採用ターゲット(魚)が少ない求人媒体(池)に掲載されていてはあまり効果は出ません。
逆に採用ターゲット(魚)が存在している求人媒体(池)に掲載していても、伝えるべきメリット(エサ)が間違っていたら食いつきません。また、伝えるべきメリット(エサ)から逆算して、狙うべきターゲット(魚)を変更するのも一つの手法です。
「魚・池・エサ」の3つが揃ったときに応募が集まりやすくなりますので、ときには媒体を再検討することも重要です。
媒体の選び方が分からないなどお困りのことがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
この記事では、採用活動を成功させるための「Job Market Fit 理論」を中心に、求職者理解の重要性と具体的な改善ステップを解説しました。採用成功の鍵は、求職者の行動や考え方を深く理解し、それに基づいて戦略を最適化することにあります。
求職者理解のための調査方法として、社内アンケートや求人サイトのデータ収集、Webアンケートやキーワード調査、口コミサイトの活用など、幅広い手法を紹介しました。さらに、採用プロセス改善の10のアプローチにより、求職者の不安を払拭し、企業の魅力を引き出す方法についても提案しました。
「これをすべて自社で行うのは大変では?」と思われるかもしれません。しかし、こうした取り組みが採用成功の要です。自社での対応が難しい場合は、ぜひ私たちの採用支援サービスにご相談ください。貴社に最適な採用戦略をプロの視点でサポートし、理想の人材との出会いをお手伝いいたします。